「日日の麺麭・風貌」読了。
この人のことはたしか坪内祐三著作で知ったのだと思う。マイナーポエットという言い方で、小沼丹上林暁といった作家たちといっしょに出てきた。この小山清という人の晩年は悲惨としかいいようがない。所帯を持って子供も出来て、さあこれからというときに、病で倒れて失語症に陥る。作家にとっては致命傷だ。なんとかリハビリに励むが、生活に疲れた妻が自殺。もうどうしようもない状況だ。そんな中、若干の作品を残すが、亡くなってしまった。
短編とエッセイしか残していないようだ。全集にしても一冊で終わってしまう。そんな少ない作品群の何篇かがこの文庫に収録されている。前にも記したが、現在この世の人々が失ってしまった瑣末だけれど人間らしい良きことが作品に刻まれている。なんてことはない話ではあるが何度でも読み返したくなる。そんな作品だ。